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2023年3月30日

修了生からのメッセージ NGP第4期生(2023年3月修了)

医学系研究科
舘花美沙子

医学系研究科・発生発達神経科学分野(大隅典子研究室)に在籍し、博士課程およびNeuro Global Program (NGP)を修了した舘花美沙子と申します。これまでを振り返りながら、私が学んだことや感じたことを記したいと思います。

私は修士課程在籍時にNGPのプログラム生に採択いただき、博士課程4年次まで数々のセミナーやイベントに参加させていただきました。

このプログラムには、「英語力を鍛えて、言語の障壁なく世界中の研究者とコミュニケーションがとれるようになりたい」、「最新の技術を学びに留学してみたい」、そんな思いで応募しました。1つ目に関しては、海外の研究者によるセミナーやアカデミック英語講座、NGP生との交流により、英語でのコミュニケーションに不安を覚えることが少なくなりました。NGP参画当初は英語での発表というだけで緊張していたように記憶していますが、博士課程の間に参加した国際学会では、英語での質疑応答でもストレスを感じることなくディスカッションすることができました。世界中から集まる研究者や大学院生からコメントをもらい、時には実験手法のアドバイスをし合うなど、とても大きな収穫を得ることができました。さらに、もうひとつ強く感じたことがあります。それは、言語だけでなく、文化や環境・これまでの経験など相手のバックグラウンドまで共有する理解力の大切さです。もちろんすべてを瞬時に把握するというのは日本語でのコミュニケーションにおいても難しいことですが、言葉が流暢なだけでは本当のコミュニケーションにはならないのだと思います。研究発表の場においては、分野の異なる相手に説明する場面がありますし、分野が同じでもテーマが違うだけで基礎知識が異なることは多々あります。そういったときに、相手の理解度を意識しながら説明する姿勢は、学際的な研究の場においてとくに大切だと感じました。また、普段の研究生活においても、多様な国からの留学生と共に過ごすなかで、相手のバックグラウンドに対する理解力やリスペクトはとても大切なものでした。参画当初は英語がうまくなることが「グローバル」と思っていたところがありますが、本当のグローバルを目指すなら、言語含めた相手のバックグラウンドを受け入れ理解する包容力が必要なのではないかと思います。NGPでは、受け身ではなく、実際に英語で相互にコミュニケーションを取る場面も多いため、このような気づきを得られたと思います。

2つ目の留学に関することですが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の流行により、現地へ留学することは叶いませんでした。その点に関しては心残りがありますが、オンラインで豪州Wollongong大学のMcLaughlin先生にご指導いただき、初めて取り組む実験を進めることができました。当時、精子のマイクロRNAの解析を行いたいと思っていましたが、なかなか上手くいかないステップがありました。そんな時、オンラインで指導してもらえる先生を探すこととなり、大隅先生からもアドバイスをいただきながら、その分野の第一人者の一人であるMcLaughlin先生にコンタクトを取らせていただきました。McLaughlin先生は快く引き受けてくださり、定期的にミーティングを行いディスカッションしていただきました。また、QE2の審査には、私の研究テーマと関連するPaternal Origins of Health and Disease (POHaD) 研究第一人者である、KU LeuvenのSoubry先生にも参加していただきました。この点は、コロナ禍以降オンライン会議が活発になり、それに対する打診のハードルが下がったからこそ実現したように思います。Soubry先生は来日して審査に参加してくださいましたが、もしそれが難しくても、オンラインで参加いただくことも可能でした。場所の問題に阻まれず、こういった先生方から審査のコメントをいただけることは、とても光栄なことです。オンラインでのミーティングは技術的には可能であるにもかかわらずあまり活発でなかったところ、コロナ禍によりここまでオンラインでの交流がスムーズになったことは、今後の国際共同研究において大きな利点となるように思います。このように、私の場合、現地留学は叶いませんでしたが、どんな状況からも気づきは得られ、学ぶことはできるのだと思いました。

他にも、UCLと東北大学の大学間提携キックオフイベントに参加しロンドンの研究所などを訪問したことや、脳解剖実習など、多様なプログラムから多くを学びました。後輩の皆さんも、それぞれ色々な志をもってNGPに参画されることと思いますが、NGPにはそれに対応する様々なプログラムがあり、サポートしてくださる先生方・スタッフの皆様がいらっしゃいます。是非、後悔のないよう色々なことに挑戦してみてください。そして、うまくいくこと・うまくいかないこと両方があると思いますが、どんな状況からも学ぶ姿勢を忘れなければ、無駄な経験はないと思います。立派な先輩ではありませんが、私の経験談が少しでも参考になったら幸いです。

最後に、NGPでの活動や大学院での研究活動において、ご指導・ご支援いただきました全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。